C.F.MARTIN D-28 Serial #118294 1951年

1940年中盤から50年代後半にかけて、マーチン社の年間生産本数は4-5000本から5-6000本と少しずつ増え始める。 大きな戦争も終結し、軍需が減少し資材の供給見込みが出てきて、人々も明るい未来を目指し歩みだしていた事が窺える。

そんな頃、1951年にこのD-28は Martinのナザレス工場で作られ世に送り出された。

1951年当時、Nat King Cole、Tony Bennet, Les Paul & Mary らがヒットチャートを賑わせ、カントリーシーンではHank Williamsの活躍がピークを迎えている年である。

日本では国際社会へ復帰するべく復興の道をたどっており、物価といえば電車賃が10円位、美空ひばりが日本で全国的な人気を確立した頃である。
Martin社において1951年のトータル生産本数は5637本。うちD-28は476本作られたというデータが残っている。

ここに紹介するD-28 シリアルナンバー118294は、1951年の中でも比較的若い方で、その年333本目の生産ラインに乗っていたという事になろうか。 一月約470本の生産があったと概算で考えると、1月に完成したという予想も大筋間違ってはいないと思われる。

イマジネーションは尽きないが、ともかく今から58年も昔の事と考えると感慨深い。
当時ハカランダ材が普通に使われており、サイドとバックは見事なハカランダ材を使用。

トップは1946年よりアディロンダックからシトカスプルースへ変更となったので、トップ材はシトカスプルース。

ただし、1950年代から60年代にかけて要所でアディロンダックが混在していたと言われており、アディロンダックの可能性も否定できないが、それすらVintageならではの楽しみの一つになっている。
ペグは1950年からのDモデルにはクルーソンのシールドバックが採用されており、そのとおりのペグが付いている。時代と共に進化するMartinは 40年代に入りグローバーからクルーソンにシフトチェンジした後、更にオープンバック、デラックス、シールドバックと数年スパンでモデル変更を重ねている。

1958年に再度グローバーに戻るまで8年間クルーソンシールドバックの時代が続いているので、このペグの精度がMartinスタンダードを満たしていたという事だろう。58年という年月の間で、消耗箇所は必要なメンテナンスをされている。

オーナーは何人変わったのか不明だが、乱暴に扱われた形跡が無く、愛情を持って使われていた事が分かる。大きなダメージは無く、総じて良好な状態を保っている。

特筆すべきはトップブレーシングをスキャロップに改良してある所である。当時は現在のGE代表されるような復刻モデルはなく、かつてのオーナーがプリウォーのサウンドに少しでも近づけたい一心で希望したのだろう。

いつの時代も音色に対する欲求は憧れを追い求めることであり、D-28はその最たるものとして未だその座を譲らない名器中の名器である。ブリッジプレートはオリジナルで残っている。
ブリッジとピックガードは交換されている。ナット、フレット、サドルのオリジナリティは本来大きな問題では無かろう。楽器は鳴らされるために生まれてきたので、プレイヤーが最高の音を出す為や、メンテナンス目的のモディフィケーションを施すのは、ある程度許容範囲とみなして良いのではないだろうか。(オンボードのピックアップを埋め込むなどの大手術は少し考えてしまうが。)
ケースはノンオリジナルだが、オリジナルと思われるブリッジとピックガード(貴重!)はケースの中にきちんと収められており、その細かい心遣いからみて、丁寧な管理の出来るオーナーの手を渡り歩いてきたD-28だと思われる。

そしてこのD-28が出す音色はやはり別格である。まさしくキャノン、大砲である。ドレッドノートと名づけられた大柄のボディではあるが、こんなに鳴るのかというほどのボリュームを持っている。しかも、ただ音が大きいだけではなくバランスがよく、ソフトに弾けばソフトに呼応する繊細さも兼ね備えている。

ブラジリアンローズウッドが絶滅希少材としてワシントン条約のAppendix Iに格上げされ、商業用の取引が出来なくなった今も、多くのギターメーカーがこの材の獲得にやっきになっている。その結果ハカランダ材を使ったギターは価格高騰の一途をたどっているが、その理由は音色。ハカランダ特有の色艶ある中低域は表現出来かねる。このD-28も惚れ惚れするような魅惑のトーンを持っており、コードストロークで耳を澄ますと感動が押し寄せてくる。まさに耳の贅沢といえよう。
58年を経ていまだ現役。飛びぬけた音を持つアコースティックギターの代名詞、Martin D-28のVintage 1951年製がついに到着しました!

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